
いま『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』(三笠書房)が話題になってますね。
差別している人にその事実を指摘するのは確かに大事です。
出版社としての姿勢も問われて然るべきだと思います。
けれどそれだけではもったいない、というのが正直なところです。
この問題はニューロダイバーシティにまつわることです。
ニューロダイバーシティとは神経系的多様性とでも訳せましょうか。
要は発達特性などを多様性の一環として捉えて社会的に許容しましょうということです。
けれど。
現実ではニューロダイバーシティーは日本社会ではそれほど浸透しておらず
発達特性をお持ちの方が差別すらされている例が少なくはないのではないでしょうか。
その社会の現実をあたかもなかったかのようにして、
個人(今回では著者と出版社)による差別のことにだけに焦点を当てて非難するさまに違和感を覚えます。
個人を非難しても差別の構造が変わらないと、また差別が再生産されてしまう可能性があります。
日本社会は「普通であること」への同調圧力が極端に高い社会です。
そして「普通であること」と多様性(ダイバーシティ)は対立します。
対立するということはニューロダイバーシティが許容されにくい社会ということです。
受け入れ難いかもしれませんが、まずはこの点を受け入れることから始めないと
問題の本質がぼやけてしまいます。
社会と出来事は合わせ鏡なので
この本の誕生とその後の議論も
今の日本社会では必然だったのかもしれません。
今まで表に出てこなかっただけ、とも言えるかもしれません。
せっかく表面化してきた問題なので著者や出版社を批判するだけではなく
ニューロダイバーシティを許容しない社会に対しても
疑問の目が向けられると問題解決的なアプローチになると思います。
加えて、日本の異常なほどまでの「普通であること」へのこだわりが
様々な生きづらさの遠因となっていること、
そして多様性を受け入れるにはどうすれば良いか
真剣に考える機運が生まれることを願ってます。

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